HOME

 

集中講義・課題提示レポート(200412)

「九州大学が本来の教育機能を回復するために」

九州大学21世紀プログラム一年次在籍

山下 琴恵

 

 

問い:

 九州大学が本来の教育機能を回復するために、どのように改革すべきか?

 

問いの説明:

 政府によって援助される教育機関においてその機能とは、教育を受けた者が社会に出たときにその社会システムに対応し、社会を発展させていく人間を育成することであると私は考える。そのために莫大な額の社会人の税金が、教育費として社会を担う者に投資されているのだ。

教育機関の中でも大学が果たす教育機能は、社会において直面する様々な問題を幅広く捉え、解決していくための学問的な深い知識や思考力を有する人間を輩出することであると考える。特に領域が高度に細分化されそれぞれが影響しあう現代社会においては、教養と専門知識を持つ者が必要なのだ。そのために大学があるのだと私は考える。

こう考えるとき、元国立大学(現学校法人)の九州大学は、より多くの資金援助を受けているため、その役割は一層強く求められているといえる。

しかしながら、少なくとも現在において九州大学はその役割を十分には果たしていなしと考える。というのも様々なところで「いい加減さ」が見えるからだ。たとえば多くの講師は授業に平気で遅れてくるし、早くに授業を切り上げる講師もいる。何人か熱心な講師はいるのだが、多くはあまり熱意を感じさせず、中にはあまりにもやる気のないいい加減な授業をする講師もいる。当然のように入学当初に比べると、生徒は授業中寝たり欠席する者が増えていった。周りの学生に聞くと、自己投資というより単位をとるために授業を履修している者が多いようだし、すると当然簡単に単位を取得できる授業がもてはやされる。そして講師陣のモチベーションも下がってくるのだ。

この現象はとくに「教養科目」において目立つ。専門を決めて入ってきた多くの学部生にとって、教養科目は無駄なものであるようだ。専門を研究している講師にとっても、専門の基礎知識を持たない他学部生を教えるのは大変だし、生徒の側にやる気がないなら、モチベーションは下がっていく一方だ。こうして悪循環は続く。

このような現状を打開し、大学が本来の教育機能を回復するためにはどうすればよいのだろうか。

 

問いに答える:

今まで九州大学は国立大学として十分に資金援助を受けており、旧帝大ブランドと授業料の安さ故に、特に何も改善努力をせずとも学生は入ってきた。そのため大学は「学生に教える者」としての講師を養成することはなく、授業の質を磨くこともしてこなかったように思う。そんな中大学は法人化し、体勢の改善を求められているわけだが、今まで学問的な研究しかしてこなかった教授人による運営では、うまくできるはずもない。

そこで第一に、九州大学卒の企業で働く優秀な人を運営のアドバイザーとして招くと良いと思う。こうすることで、柔軟な新しいシステムを実施することが容易になるし、事業を展開して収益を出すことで、できることの幅が広がる。もちろんアドバイザーには有給で仕事をしてもらい、上げた成果によって給料を支払うべきだ。そうすれば、未開拓の九州大学の再生にやりがいを感じて、優秀な人材が母校の改善に死力してくれるだろうと期待する。

ただし、あくまでアドバイザーであり、完全に運営を任せてはいけないと思う。なぜなら企業人は収益を上げることを考えるものであるから、利益のために従来の学問空間が崩壊する危険があるからだ。利益を上げない文学などの学問は真っ先に切られるだろうし、学問を愛する教授たちとの摩擦が激しくなるだろう。また、かなりの経費を費やしている21世紀プログラムは真っ先に廃止されてしまう・・。また、主体を教授陣に据え置くことで「自分たちの大学」という意識を持たせ、彼等のモチベーションの向上につながると思う。

第二に、授業監督官を各授業に設けることを提案する。彼らは様々な講師の授業評価をする。そのことで授業改善をはかるのだ。確かに今までも生徒による授業アンケートは実施されているが、いいかげんに書いたり、理不尽な非難・中傷をする可能性が多いにあるため、授業監督官を雇い、より授業の改善につながる評価を行うべきだ。そして運営者は監督官の評価レポートと学生の授業評価アンケートを参考にして、授業の良し悪しによって教授の給料を決めるべきだ。

第三に、橋本先生が授業で述べていたように、企業人や様々に社会で活躍している人を呼び、講義してもらうのも良いと思う。確かに、世間には大学生に教えたいという人が山ほどいる。これは絶対活かすべきだ。現に今「起業化セミナー」という企業人による講義を私は受けているが、実際に様々な経験を積んでいるだけあって、その話は興味深いものだ。企業人講師も社会のことを知ってもらって、企業が求める人物に大学生活で成長してもらい、優秀な人材を企業に誘致しようと熱心に講義するのだろう。ただ、大学は学問を教えるところであるため、教授による講義をあくまで中心に据えるべきだと思う。

最後に、監督生を各クラスで2、3人つくると良いと思う。監督生は成績優秀者がなり、授業料は免除。かわりに、授業についていけない学生に勉強を教える、大学生のための個別教師になる。名簿はセンターが管理し、教えてもらいたい生徒は申請して、内容に適した監督生に無料で教えてもらうことができる。そうすれば、授業についていけなくて放棄してしまう学生が出るのを防ぐと思うし、無料であればその機会を活用しようと、学生の学ぶ意欲も向上するのではないかと思う。もちろん監督生は学生に宿題の回答を教えるのではなくやり方を教えるために、彼らには研修を十分に受けてもらう。

私は以上に挙げた4つの試みで、九大の教育機能を回復させることができると思う。